ものづくりの火プロジェクト
~プロジェクトのはじまり~
EPISODE.00
宮島弥山大本山大聖院
新型コロナウイルス感染症が日本で流行し始め早二年が経ちました。この二年間これまでより時間がとれることが多かったため、運動も兼ねて弥山に登ることが増えました。毎回大聖院コースで上がり、三鬼堂で勤行を行い、日々の無事と早期終息を御宝前にて祈願致しました。
いつも登っているおりに、山の空気を吸うことで、この霊山の木々、川の水、太陽の光などが持つ大自然の恵みを五感で感じ、自然が解き放つ澄んだエネルギーがからだ中に巡らされて、手足の先まで細胞の一つ一つが喜びを感じているような感覚を受けています。
登り始める頃、少し元気がなくなっていた自分の心の灯火が十八丁目の仁王門を超えて、霊火堂が見えてくるころには「また今日も一日頑張ろう」とめらめらと燃え上がる炎になっています。
コロナ禍になり弥山に登る度に、皆様の心にも灯火は宿っていて、コロナ禍で特に疲弊した心の灯火になんとか燃料を送り、皆様の心も元気になって頂くお手伝いはできないものかと考えておりました。
そんなある時、ご縁を頂きまして、マツダ㈱のデザイン部の方々にこの「灯火」について当山の「消えずの火」とコロナ禍で疲弊した我々人間の「心の灯火」についてお話をさせていただく機会がありました。一二〇〇年前に弘法大師空海さんが唐より真言密教を日本に持ち帰り、人々の幸せを願い、灯され続けた「消えずの火」。現在、コロナ禍で様々な分野で元気がなくなっているこの世界に、宮島弥山からなにか元気になれる、「自灯明」をもう一度しっかり灯して頂くようなことができないものかと。
不思議なことに日々の想いが様々なご縁をつなぎ、マツダさんだけではなく、マルニ木工さん、お墓の日光さん、広島市立大学の共創ゼミの学生さんと広島のものづくりに携わる企業や学生の皆様がご縁に導かれ、モノつくりに懸けてこられた情熱の灯火をこの度この困難な時代にみんなで支えあって生きようというメッセージを込めて、「消えずの火」を灯す「灯火台」と「大香炉」を弥山霊火堂に奉納していただくことになりました。
「一人でも多くの方の心に、少しでも真の灯火が灯りますように」
~灯火台、大香炉のできるまで~
EPISODE.01 マツダ
灯火台
「工業で世の中に貢献する」これは、マツダの前身である東洋工業の創業時の志である。
マツダは、東洋コルク工業株式会社として1920年に広島の地で創業しました。広島の歴史と共に歩み、そしてその間に幾多の経営危機に直面しながらも地域のみなさまのサポートと「飽くなき挑戦」で、世界がコロナ禍に見舞われた2020年、創立100周年を迎えました。
そんな折、「消えずの火」と守り続けねばならない「心の灯」のお話をお聞きする機会を得ました。コロナ禍の閉塞した世の中を元気にする為に、広島に受け継がれてきたものづくりの力でなにか貢献できることはないかと考え、地域のものづくり企業の有志が集まって「消えずの火 ものづくり分科会」が発足し、マツダは灯火台の製作と全体のデザインコーディネートを担当させていただくことになりました。
製作にあたり、マツダのデザイン部門が挑戦したのは「時を超えるカタチ」でした。10年先を見据えたプロダクトデザインではなく、数百年先まで存在し得る本質を極めたデザイン。そして、灯火台本体だけではなく、「火」そのものの「カタチ」にもこだわりました。
ぜひ多くの方に広島、そして弥山にお越しいただき、マツダで「匠」と呼ばれているモデラ―が自身の手で一枚の鋼板を叩いて板金し、想いを込めて磨き上げた灯火台と「消えずの火」をご覧いただければと思います。
EPISODE.02 マルニ木工
香炉台
創業者の山中武夫は宮島の出身で、幼いころから木工細工に触れ、木の魅力に取りつかれ、1928年に昭和曲木工場として創業しました。
マルニ木工は創業者が掲げた「工芸の工業化」というモットーを大切に守りながら、「100年経っても『世界の定番』として認められる木工家具をつくり続ける」というビジョンの下、家具作りに励んでいます。
創業者が生まれ育った宮島に貢献できる機会をいただいたこと、100年後の後輩に伝えられる仕事になること、そして、地元の皆さまと一緒にものづくりが出来ること、こんな素晴らしい機会をいただいたことに感謝しています。
マツダさんが求める素晴らしいデザインを形にしつつ、見えないところで特殊な木組みを使い、重い大香炉を支える強度を維持しております。また、外での使用を想定して採用したウェンジ材は、普通の刃物では負けてしまうほど堅く、熟練の職人が時間をかけて丁寧に曲線を削り出していきました。
EPISODE.03 お墓の日光
大香炉
私たちはお墓の建立を通じ、お客様と大切なご先祖様(故人)との絆・ご縁をいつまでも笑顔で繋いで頂くための存在でありたいと考えております。
お墓づくりの原点は、きわめてシンプルです。「お客様にとって 良いお墓づくり」「お客様目線でのお墓づくり」を基本理念としております。大切なご家族を亡くされ、悲しみの最中お墓をご検討下さいますお客様に対し「最後は、笑顔でお墓の完成を迎えて頂きたい」それが、私たちが考えるお墓づくりです。
すべての方と、絆・ご縁を大切にしております。そんな中「消えずの火 大香炉」のお話を頂き、大聖院様・マツダ様の想いに感銘を受けました。
日本を代表する宮島から「消えずの火」を通じてすべての方々へ笑顔と平和な未来を届けたいと願っております。
お話を頂いた時に、作成する為の難易度の高さを感じました。「大香炉」のデザインはマツダ様が設計されており、とても美しい曲線を描いた形状をしておりました。「流石」の一言です。
石で複雑な形状を作成する場合、忠実に再現をするのが非常に難しい為かなり試行錯誤しました。
何十年・何百年と「消えずの火」が途絶える事無く笑顔と平和に繋がり、世界の方々に伝わって欲しいと願っております。
マツダ・広島市立大学芸術学部共創ゼミ
灯火台デザイン
コロナ禍、学ぶことが困難な中で粘り強く思いをカタチにした若き力が「ものづくりの火」プロジェクトに加わりました。
広島が日本の誇れるモノづくりの拠点となることを目指し、2017年からマツダと広島市立大学との共創ゼミが開講されました。
5年目となる本年度、宮島弥山大本山大聖院様のご協力の下 弥山霊歌火堂「消えずの火」灯火台のデザインを課題として、学生と共にモノづくりを高め合う機会を得ることができました。
様々な気づきと発想がありました。コロナ禍の中、ゼミを続けることが困難な状況が幾度となくありましたが、8名の学生が強く想いを抱き、最後まで粘り強く作品を作りきってくれました。